【後編】紙とエコロジーについてのすこし真面目な考察
- 2022.05.9 | コラム
前編はこちら
パッケージとして何ができるか?
いくら紙が環境にやさしいとは言っても、
当然ながら環境負荷が一切ないというわけではありません。
「サーキュラーエコノミー」という言葉がある通り、
生産・消費・廃棄の循環ひとつひとつを
より真剣に見つめ直していくことが重要です。
資源をできるだけ長く循環させながら利用することで、
廃棄物などの無駄を富に変える循環型の経済モデルのこと。
日本語では「循環型経済」と訳される。
では、パッケージなどの紙製品を製造する際、
どんなことに気を付けるといいのでしょう?
いくつかポイントを考えてみました。
● 適切な数量を生産する
どれくらい売れるか分からないから多めに作る。
ロットを増やすと単価が下がるから多めに作る。
そうして結果的に消化しきれず廃棄することになるのは
もったいないだけでなく、環境にもいいものではありません。
それは、商品自体はもちろん、パッケージも同様のことがいえます。
以前「いま、多品種少量生産が求められる理由とは?」という記事を投稿しましたが
時代は少品種大量生産から、多品種少量生産に向かっており、
マーケットに合う商品を、適切な量、適切なタイミングで販売することが
ビジネスの面からも重要になってきています。
● 使用紙を環境負荷の少ないものにする
近年存在感を高めている「FSC®認証紙」を使用することで
世界の森林保全を応援できるだけでなく、
適切な森林管理を行っている林業者の支援にもつながります。
国際的なNGOであるFSC®の責任ある森林管理や
加工・流通の規格に則り認証された紙で、
適切に管理されたFSC®認証林、再生資源および
その他の管理された供給源からの原材料から作られている。
FSC®認証の基準に基づき認証された製品には、
FSC®認証のロゴマークが付けられます。
池田紙器工業も2022年2月にFSC®認証紙を使用するFSC®認証製品の
加工・流通過程に関わる企業として認証を取得しました。
(FSC®C173797)
FSC®認証紙以外にも、本来廃棄されるものを原料とした紙も注目です。
原料となるものは竹、バナナ、サトウキビ、米、じゃがいもなど様々あり、
それぞれ独特な風合いがあるので、すこし個性を出したいときにもおすすめです。
また、PPフィルムを貼るような表面加工も再生紙としてリサイクルができないため
絶対に必要ということでなければ、避けるのも方法のひとつです。
● 紙の使用量を抑えたパッケージデザインにする
パッケージの形状を考える際にも、サイズや展開図を少し意識してみます。
たとえば瓶を1本入れるパッケージを作りたいとき。
使う紙の規格サイズにぴったり納まる箱の寸法だと、
廃棄される余白部分が少なく、とても経済的です。
これが少し大きくなると…
先程の半分もしくはそれ以下しか入れられない…なんてこともあります。
こうなると無駄が多くなり、紙の使用枚数も増えコストも上がってしまいます。
入れるものがあってのパッケージではありますが、
こうした裏事情が把握できる弊社だからこそ意識している部分でもあり、
時にはお客様へサイズ変更のご提案をさせていただいています。
● インク量を抑えた印刷デザインにする
製造前の印刷デザインの段階で出来ること。
インクの使用量でも環境への影響は変わるので、
場合によってはそういった視点で
デザインを見直してみるのも方法のひとつです。
たとえばベタで印刷するデザインを変更したり。
そうすることで視認性が高まるなど
他のメリットが生まれる場合もあります。
● 有害物質を発生させない印刷方法を選ぶ
そして製造時の印刷工程でできること。
環境負荷の少ない印刷方法・印刷会社を選ぶ基準として
「グリーンプリンティング認定制度」があります。
印刷工場が購入・使用する資機材を環境配慮基準に基づき認定する制度。
対象品目は、洗浄剤、エッチング液、印刷版、現像機、セッター、
製版薬品、デジタル印刷機等であり、印刷資機材メーカーからの
認定基準適合証明書により、環境配慮度合いの達成点数を算出し、
3段階のGPマークが表示されます。
池田紙器工業で導入しているデジタル印刷機FUJIFILM JetPress720Sは、
「グリーンプリンティング資機材認定制度」において、
最高ランクである「スリースター」の認定を取得しています。
また、インクとプレコンディショナーは、
印刷インキ工業連合会が制定した
「印刷インキに関する自主規制(NL規制)」に準拠しています。
「原則として全てを認可するが、禁止するものだけを一覧表とする」
規制方法で、安全衛生上人体や環境に有害なおそれのある
と考えられている物質をリストアップ(NL:ネガティブリスト)し、
その使用を禁止する方法。
NL規制対象物質は、国内外の法令、及び化学物質の
有害性情報をもとにした選定基準によって選定され、
毎年対象物質の追加・ 削除等の見直しを行っている。
ひとつの製品を作るだけでも、
資材(紙)、サイズ、形状、印刷…いろいろなものが関係しています。
そのひとつひとつを環境負荷の視点で見直してみると
出来ることは意外なほどあるのではないかと思います。
池田紙器工業は、製品製造に関わるそれぞれの要素から
環境問題へのアクションに繋がるよう
これからも取り組んでまいります。